
目次
お子様の矯正における第一期と第二期の基本的な違い
子どもの矯正は、あごの育ちや、大人の歯(永久歯)が並ぶすき間にはたらきかける「第一期」と、生えそろった大人の歯の位置を整える「第二期」で、ねらいと時期がちがいます。この記事では、年齢だけで決めない始めどきの目安や、第一期のあとに様子を見るケース、受診の前に考えておきたい費用や通院の見通しをお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 第一期はあごの育ちや、大人の歯(永久歯)が並ぶすき間づくり、第二期は大人の歯の並びとかみ合わせを整える段階です。
- 始める時期は年齢だけでなく、歯の生えかわりやあごの育ち、お口のはたらきを見て考えます。
- 第一期のあとは様子を見ながら、第二期が必要か、費用や通い方、装置のあつかいについて歯科医師に相談します。
矯正の第一期と第二期の違いを開始時期と治療目的で整理

子どもの矯正は、乳歯と永久歯がまじる時期に行う第一期治療(Ⅰ期治療)と、永久歯がそろってから行う第二期治療(Ⅱ期治療)の2つの段階に分かれます。それぞれの段階で、お口の中でのはたらきがどうちがうのかを見ていきましょう。
第一期は混合歯列期に顎の成長と永久歯のスペースへ働きかける段階
第一期治療は、乳歯と永久歯が混在する混合歯列期に、顎の幅や前後のバランスを整えて永久歯が並ぶスペースの確保を目指す段階です。あごの骨格が関わる場合もある出っ歯や受け口、歯が重なる叢生(そうせい)などに働きかけます。
使用される装置には、取り外し式のプレート(拡大床)や固定式の急速拡大装置、プレオルソやインビザライン・ファーストなどのマウスピース型矯正装置があります。混合歯列期には、マウスピース型装置や急速拡大装置で上顎の歯列の幅や容積に働きかける方法があり、お口の状態に応じた装置が選ばれます。また、上の前歯が出ている状態では、7〜11歳頃から二段階で進める方法と青年期に一段階で行う方法があり、第一期は歯並びを最終的な形へ完成させる段階ではないという位置づけにあります。
第二期は永久歯が生えそろう頃に歯並びと噛み合わせを整える段階
第二期治療は、永久歯が生えそろった後に一本一本の歯を動かし、全体の歯並びと上下の噛み合わせを整える段階です1。マルチブラケットを用いるワイヤー矯正や、マウスピース型矯正装置が中心となります。
顎のスペースと歯の大きさの兼ね合いによっては、抜歯や非抜歯の判断が必要になる場合もございます。抜歯の要否は歯の並びだけでなく、治療後の口元の印象や横顔のラインも含めて検討し、歯科医師から説明を受けたうえで選択していきます。なお、歯を動かす期間が終わった後は、歯が元の位置へ戻ろうとするのを防ぐ保定治療の期間が続きます。
開始時期・目的・装置・期間の違いを一つの表で見る
第一期と第二期の主な違いを表にまとめました。
| 項目 | 第一期治療(Ⅰ期治療) | 第二期治療(Ⅱ期治療) |
|---|---|---|
| 主な時期(生え替わり) | 混合歯列期(乳歯と永久歯がまじる時期) | 永久歯列期(永久歯が生えそろったあと) |
| 治療の目的 | 顎の成長を利用した土台づくり、永久歯のスペース確保 | 永久歯の位置の調整、全体の歯並びと噛み合わせの確立 |
| 主な装置 | 拡大床、急速拡大装置、マウスピース型装置など2 | ワイヤー矯正、マウスピース型矯正装置など |
| 期間の目安 | 装置や状態により異なる(当院のインビザライン・ファーストは約1年〜1年半) | 歯並びの状態により異なる |
| お子様の協力が必要な場面 | 取り外し式装置の装着時間の管理、お口の体操など | 装置の清掃、ゴムかけやマウスピースの装着管理 |
※表の時期や期間は、おおよその目安です。お子様に合う装置や期間は、くわしい検査のあとに決まります。費用の内わけや考え方は歯科医院ごとにちがうため、確かめ方はあとの章でお伝えします。
年齢だけで始める時期を決めない理由:生え替わりと舌・口周りの筋肉
同じ8歳のお子様でも、前歯の生え替わりの進み方や顎の成長の段階は一人ひとり異なります。そのため、同級生が矯正を始めたという年齢の目安だけで開始時期を決めることはできません。
歯並びの乱れには、口呼吸や指しゃぶり、舌の癖など、「呼吸」「摂食(よく噛むこと)」「嚥下(飲み込むこと)」のお口の機能が関わっています。歯の位置だけでなく、舌や口の周りの筋肉、顎のバランス、飲み込み方の癖を確かめることが、開始時期を見極める材料になります。その場しのぎではなく、10年、20年先の「食べること」「話すこと」「笑うこと」を見据えて判断していく視点が求められます。
当院では3歳頃から、口呼吸や指しゃぶり、舌の癖などを直すトレーニング(プレ矯正)も行っています。本格的な矯正治療の前の段階として行うトレーニングです。
ポイント
第一期は顎の土台とスペースづくり、第二期は永久歯の並びと噛み合わせを整える段階であり、開始時期は年齢だけでなく生え替わりやお口の機能を見て判断します。
第一期の後に第二期へ進むとは限らない:経過観察を含めた判断の目安
第一期治療を終えた後は、永久歯が生えそろうまで経過観察を行い、そのうえで第二期治療が必要かどうかを判断します。最初から二段階すべてが確定しているわけではない点を確認しておきましょう。
「第一期を始めれば第二期も続く」という思い込みとその実際
第一期を始めると第二期まで治療が続くと思われがちですが、実際には経過を見ながら段階ごとに判断します。第一期で顎のバランスやスペースの課題が緩和され、その後に永久歯が並ぶ場所を確保できれば、第二期を行わずに経過観察で終了する場合もございます。
一方で、第一期を行っても永久歯の大きさや生え方、思春期の骨格の成長によって、第二期での調整が必要になるケースもあります。出っ歯の傾向があるお子様に早く治療を始めても、その後の経過は一人ひとり異なります。第一期の役割を過大にも過小にも捉えず、成長に合わせた選択肢として考えることが大切です。
経過観察の期間に確認すること:生え替わり・噛み合わせ・後戻り
第一期が終わってから第二期が必要かを決めるまでは、定期的に歯科医院に通ってお口の変化を確かめます。たとえば、永久歯が生える順番や向き、上下のかみ合わせの深さ、あごの育ち方を見ます。あわせて、歯が元にもどろうとするきざしや、舌・口まわりの癖が出ていないかも確かめます。
たとえば噛み合わせが深い過蓋咬合(かがいこうごう)では、成長期には奥歯の高さが増すことを期待した対応をとり、成人期には前歯を沈める動きを検討するなど、時期によって治療の考え方が異なります。また、深い噛み合わせは治療のあとに元へもどりやすく、治すのがむずかしい歯並びの一つとされるため、長い目で安定を見ていく観察が大切です。受診の間隔はお子様のお口の状態によって異なるため、受診時に歯科医院へ確認してください。
今すぐ第一期を検討したいケースと、生え替わりを待てるケース
現在のお子様の状態によって、早めに第一期を検討したい場合と、生え替わりを待ちながら様子を見られる場合があります。
- 第一期を検討しやすいケース:受け口や上下の顎の幅のずれがある、永久歯が並ぶスペースが大きく不足している、出っ歯の傾向があり前歯をぶつけやすい、口呼吸や舌の癖が歯の並び方に影響している場合
- 生え替わりを待ちやすいケース:前歯に軽い重なりがあるものの、顎の成長やスペースに大きな偏りがなく、生え替わりの途中段階にある場合
8歳ごろで前歯の重なりが気になり始めた段階では、すぐに装置を着けるかを決める前に、まずは現状と今後の見通しを相談し、経過観察でよいかを尋ねることから始めてもよいでしょう。最終的な判断は、レントゲンや口腔内の精密検査に基づいて行われます。
ポイント
第一期のあとは、大人の歯の生え方やかみ合わせの様子を見て、必要なときに第二期へ進むかを考えます。
費用・通院・お子様の協力の見通しを受診前に整理する
小児矯正は数年にわたるため、ご家庭での予算や送迎の予定、お子様ご自身の気持ちを受診前に整理しておくと、歯科医師への相談が進めやすくなります。
段階ごとの費用の内訳と、第二期へ進む場合の扱いを医院に尋ねる
子どもの矯正治療の多くは公的医療保険が使えない自由診療です(生まれつきの病気などに伴う一部の矯正は保険の対象になります)。当院では相談料は無料で、検査・診断料11,000円(税込)、拡大床を使うこども矯正440,000円(税込)、インビザライン・ファースト605,000円(税込・観察料込み)です。費用のしくみは医療機関によってちがいます。
受診時には、以下の項目を歯科医院に確認しておくと、ご家族で家計の見通しを話し合う材料になります。
- くわしい検査や診断の費用、装置の代金、毎回の調整料や観察料のあつかい
- 歯並びをたもつ装置(保定装置)や、第一期のあとの様子見の期間にかかる費用があるか
- 第一期から第二期へ進むことになったとき、第二期の費用がどのように決まるか
また、歯を動かす範囲が小さい場合には、その範囲に応じた装置を選択できるかどうかも、あわせて尋ねておくとよいでしょう。詳細な金額は受診時に各歯科医院でご確認ください。
装置を嫌がるお子様の場合:装着時間と家庭での管理、つらく感じやすい時期
お子様が口の中に装置を入れることを嫌がる場合、どの程度の協力が必要になるかは事前に知っておきたい点です。拡大床やマウスピース型装置などの取り外し式装置は、決められた装着時間を守れるかどうかで歯や顎への働きかけが変わります。装着時間が足りないと変化が出にくく、保護者の方が気をもむことも多くなります。
矯正中は、装置を着け始めたときや調整・交換したあと、翌日ごろに歯が浮くような違和感や痛みが強くなりやすく、数日から1週間ほどでおさまっていきます。また、歯を動かすことで歯と歯のあいだの歯ぐきが下がり、すき間が見えてくることがあります3。
混合歯列期の装置には、マウスピース型装置や固定式の拡大装置など複数の種類があります。続けにくいときに装置や計画を見直せるか、破損・紛失したときの対応も受診時に確かめておきましょう。
口腔内スキャナーの画像でお子様と一緒に歯並びを見ながら相談する
お子様自身が納得して通院を続けるためには、なぜ今お口のケアや矯正が必要なのかをご本人にわかりやすい言葉で伝える工夫が役立ちます。3Dの口腔内スキャナー(iTero)や口腔内カメラ、歯科用CTなどの設備がある歯科医院では、撮影したお口の中の画像や立体的なデータをモニターでお子様と一緒に見ながら説明を受けることができます。
来院された理由とご要望を歯科医師と共有し、歯並びの見た目だけでなく咬み合わせや横顔、お口の成長まで含めて話を聞くことで、お子様自身の納得感にもつながります。なお、混合歯列期のマウスピース型装置(インビザライン・ファーストなど)は選択肢の一つであり、対象年齢は目安として実際の口の状態で判断されます。骨格的な課題などでマウスピース単独では難しい場合は、ワイヤー矯正など他の方法との併用が検討される場合もございます。
藤沢市・鵠沼海岸駅すぐの医院で土日も含めた通院計画を立てる
矯正をしているあいだは、1〜2ヶ月に1回ほどの通院や、様子を見るための定期的な受診が続きます。習い事や下のお子様の送り迎えと重なることも考えて、平日の夕方だけでなく土曜・日曜に通うことも考えに入れておくと、負担をおさえやすくなります。
当院は小田急江ノ島線「鵠沼海岸駅」から徒歩1分で、駐車場もあります。現在の診療時間はアクセスページで確かめておくと、天気やご家庭の予定に合わせた通院のイメージがつかみやすくなります。また、スマートフォンでお口の中を撮影して歯科医師が状態を確認するリモートチェックの仕組みを取り入れているかも、来院回数の目安を知る手がかりになります。まずは現在のお口の状態を確認し、経過観察でよいかを尋ねる相談から検討してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q. 小児矯正の第一期と第二期の違いは何ですか?
A. 第一期は、乳歯と永久歯がまじる時期に、あごの育ちを生かして土台を整え、永久歯が並ぶすき間をつくる治療です。第二期は永久歯が生えそろったあとに、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置で一本ずつ歯の位置とかみ合わせを整える治療です。
Q. 取り外し式の床矯正などでお子様が続けにくくなるのはなぜですか?
A. 取り外し式の装置は、1日に決められた時間つけておく必要があり、お子様ご自身の協力とご家庭での声かけが、結果や期間にかかわるためです。お口の中の違和感でつける時間が短くなると、計画どおりに進みにくくなります。前もって、お子様の性格や生活のリズムに合う装置かどうかを歯科医師と相談しておくことが大切です。
Q. 第二期矯正はいつから始まりますか?
A. 一般的には、乳歯がすべて抜けて永久歯が生えそろったころが開始の目安とされています。ただし、永久歯の生え替わりの時期や顎の成長の進み方には個人差があるため、実際の開始時期はレントゲンなどの検査でお口の状態を確認したうえで判断されます。
Q. 矯正治療で違和感や負担を感じやすい時期はいつですか?
A. 装置を初めて装着した直後の数日から1週間前後や、装置の調整・交換を行った直後に、締め付けられるような違和感や噛んだときの痛みを感じやすくなります。多くは数日から1週間ほどで慣れていきますが、強い痛みが続く場合や装置が当たる場合は、我慢せずに歯科医院へご相談ください。
参考文献
1. Batista KB, Thiruvenachari B, Harrison JE et al. Orthodontic treatment for prominent upper front teeth (Class II malocclusion) in children and adolescents. The Cochrane database of systematic reviews. 2018. PMID: 29534303 / DOI: 10.1002/14651858.CD003452.pub4
2. Bruni A, Ferrillo M, Gallo V et al. Efficacy of clear aligners vs rapid palatal expanders on palatal volume and surface area in mixed dentition patients: A randomized controlled trial. American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics : official publication of the American Association of Orthodontists, its constituent societies, and the American Board of Orthodontics. 2024. PMID: 39066746 / DOI: 10.1016/j.ajodo.2024.04.006
3. 矯正歯科 | 東京歯科大学 水道橋病院. https://www.tdc.ac.jp/sh/treatment/departments/dental/orthodontics/
4. 研究者詳細 – 楠元 淳也. ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp. https://ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp/html/100007545_ja.html
5. 口腔顎顔面外科・矯正歯科口唇口蓋裂センター|東京大学病院. https://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/koukugeka/koushin/
飯島歯科医院 勤務医
医療法人社団晃仁会 みなと歯科 勤務医
Ken歯科 院長
医療法人社団湘耀会 Ken歯科 理事長
国際歯周内科学研究会
一般社団法人 日本摂食支援協会
小児歯科学会
老年歯科医学会
神奈川県歯科医師会在宅歯科医療相談医
神奈川県障がい者歯科1次医療担当医
神奈川県歯科医師会
藤沢市歯科医師会
日本糖尿病協会登録歯科医
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